積読と積みゲーの狭間で

ラノベブログになる予定だった何か。

『エウロパの底から』/入間人間

 

私は小説家だ。そしてこれは私の小説だ。私が心血を注いだ惨殺があり、私が身を削るように描いた苦悩がある。文の始まりから果てまで、すべてが私だ。事件は私の書いた小説の通りに起きていた。犠牲者、殺害の方法、現場の描写。すべてが私の描いたとおりに。私の見る『小説』通りに。 こんな殺し方ができるのは誰だ。こんな小説が書けるのは、なぜだ。警察も、被害者も、加害者も私を疑う。『犯人』と決めつける。だが私は『犯人』ではない。私は、小説家なのだ。

あらすじで一筋縄ではいかないことが察していただけるかと思いますが、怪作です。しかし怪作は怪作でも入間人間らしい怪作といった作品。でも帯に書かれた新感覚ミステリーという称号は果たして正しいのでしょうか。

ここまで言及しにくい作品はなかなかないと思いますが、個人的に一番心に残ったのは序盤の主人公である小説家の描写ですね。新人賞を逃しつつもデビューしていたり、第1作が実写映画化、第2作がアニメ化している小説家とは一体誰のことなんでしょうね……。その後の作家人生から描かれる懊悩が妙に(?)生々しくて、ここはかなり心に残りました。

物語としては確かに大きな反転を見せる部分もありますが、ミステリーかと尋ねられると、そこには疑問符が付きました。

ただ、中盤、終盤に至る事件を浮き彫りにする主人公の小説を活かした展開は面白かったです。終盤の展開はまさしく入間人間作品という感じで、非常によかったと思いました。ただ、オチは正直微妙ですね。好きじゃないです。

 

余談ですが『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の登場人物・上社奈月さんが出てきて嬉しかったです。