積読と積みゲーの狭間で

ラノベブログになる予定だった何か。

『ミウ -skeleton in the closet-』/乙野四万字

 

ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ)

ミウ -skeleton in the closet- (講談社タイガ)

 

 

講談社タイガより出た百合ミステリー小説です。

就職前になっても変わらない灰色の生活の中で見つけた卒業文集の作文。田中奈美子という名前でいじめの告発文の書かれたノートについて調べるうちに、主人公の「あたし」は何かに巻き込まれていく……という物語ですね。途中で出てくるミユというキャラクターが非常に魅力的でした。彼女と「あたし」の関係が、かなりミステリアスで、その危険な関わり合いがよかったと思います。とてもいい百合でした。

物語の中で提示される謎も、こちらの興味を引くようなものだったので、話の先が気になってどんどん読み進められるようなところがありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、ここまではいい点について触れましたが、この作品の問題点についても触れていきたいと思います。この作品、というかこの本の問題点はです。

「衝撃は最後にやってくる」

「ラスト10ページ」

という文言。

これはどこかで見たような文言ですが、そのどこかで行われた悲劇を再現するような結果に終わったように思います。

そのデカデカとした赤で囲まれた文字の帯の問題点は、読者に先入観を与え、かつハードルを上げすぎてしまう危険性を孕んでいるように思いました。

結果的に、僕自身は物語に対する没入度を下げてしまい、ミステリーのどんでん返しを意識することによって、百合としての物語を純粋に受け取れなくなった部分がありました。かといって、僕自身はあの帯で上げられたハードルを超えたような結末には感じられず、どこか中途半端な読書体験を過ごすことになりました。

もちろん、先入観を与えることによって最大限の効果を発揮する小説もあるかと思いますが、少なくともこの作品はそういう作品ではなかったかなと思います。