積読と積みゲーの狭間で

ラノベブログになる予定だった何か。

『アルファベット荘事件』/北山猛邦

 

アルファベット荘事件 (白泉社My文庫)

アルファベット荘事件 (白泉社My文庫)

 

岩手の洋館・アルファベット荘は、庭や屋敷内に奇怪なアルファベット形のオブジェが並ぶ奇妙な屋敷だ。そこに招かれた売れない役者・未衣子とその仲間(変人の看板女優・美久月と、何も持たない探偵・ディ)は、パーティのほかの客とともに、謎の物体・『創生の箱』をめぐる、血も凍るような惨劇に出会う…。雪の山荘に展開する、幻想本格推理小説

廃刊された白泉社My文庫より発売された、北山猛邦先生のミステリです。今はすでに絶版扱いとなっているため、かなり入手困難な一作ですが、中古市場でなんとか手に入れることができました。

物語は美術商・岩倉清一に招かれた看板女優・美久月に同伴して主人公の未衣子と探偵・ディは「アルファベット荘」という別荘へと向かいます。そこに置かれた『創世の箱』に入れられた死体について殺人事件が発生し、足跡のない不可能犯罪を推理していく……という話です。

この『創世の箱』というガジェットが北山ミステリらしくて、名前を聞いているだけでワクワクしました。使われたメイントリックは比較的察しやすく、そこに関するサプライズは小さいですが、序盤に張り巡らされた伏線が終盤に次々と回収されていくの様が非常に美しいです。

刊行順で言えば、今作は北山猛邦第2作となりますが(タッチの差で『瑠璃城』は第3作)、初期北山ミステリらしい雰囲気も相まってとても楽しめる一作でした。