積読と積みゲーの狭間で

ラノベブログになる予定だった何か。

『先生、大事なものが盗まれました』/北山猛邦

 

この記事にはネタバレが含まれます。

愛や勇気など、形のないものまで盗む伝説の怪盗・フェレス。その怪盗が、凪島のアートギャラリーに犯行後カードを残した!
灯台守高校に入学した雪子は、探偵高校と怪盗高校の幼馴染みとともに捜査に乗り出す。だが盗まれたものは見つからず、事件の背後に暗躍する教師の影が。

講談社タイガから出された北山猛邦先生のミステリ小説です。

テーマは「ワットストールン」。つまりは「何が盗まれたのか」が命題のミステリです。とは言っても、ただ物が物理的に盗まれるというよりかは、普通は盗めないようなものが盗まれ、その謎が解明されるという組み立てでした。この「盗む」という行為は、いわば超能力的なものです。

「超能力によって謎を解く」というミステリは探偵・日暮旅人シリーズなどがありますが、この作品はそれらとは逆に「犯人の超能力が謎の一部である」ミステリで、そこがこの作品の面白みでもあります。

北山猛邦先生といえば、物理トリックと終末的な世界観のイメージが僕の中では強いのですが、今作はそれとはまた違うベクトルの作品でした。かなり特殊なミステリですが、魅力的な謎に北山猛邦先生らしいユニークな登場人物が相まって、非常に面白かったです。

シリーズもののようなのですが、2016年刊にもかかわらずまだ続きが出ていないのは残念ですね。根気強く待ち続けたいです。