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『『瑠璃城』殺人事件』/北山猛邦

 

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この記事はネタバレを含みます。

 『『クロック城』殺人事件』に続く北山猛邦『城』シリーズ第二作です。シリーズものといっても、話は完全に独立していて、前作『クロック城』や次作『アリス・ミラー城』そして『ギロチン城』とはキャラクター・ストーリー共に全く別の作品です。

 

 1989年、日本。1243年、フランス。1916年、ドイツ――時代と国を超えて繰り返される密室殺人。図書館で胸を貫かれた女性、城から忽然と消えた6人の騎士、戦地で消えた4人の遺体。それらに隠れた、ある男女の恋の運命。不可能犯罪も輪廻転生したのか? 切ない思いと仰天トリックが全編彩る本格ミステリ

この作品はまさしくミステリなのですが、そして同時に劇仕立てのような恋愛小説でもあります。キャラクターとキャラクターの会は、僕も読んでいて思わず「劇っぽい!」とTwitterで呟いてしまうぐらいでした。

物語は1989年、1243年、1916年を部分部分切り取るようにして紡がれていきます。

あらすじ通り、それぞれの舞台で殺人事件が起こるのですが、この作品のテーマとして輪廻転生があります。少し特殊な設定ですが、中盤、終盤にかけて、このテーマが強く物語に関わってくるようになっていきました。そしてそのテーマを使った終盤の展開はまさしく鮮やかでした。序盤の何気ない伏線がここぞの場面で現れてくるのが、この作品の魅力の一つですね。

もちろん、北山猛邦先生らしい終末的でどこか諦観を秘めた語り口や、強力なトリックも炸裂していて、文句なしに秀逸な一作でした。

すでに物理書籍の流通は終わっているようなので、電子書籍版の購入をオススメします。

 

他の『城』シリーズも面白いので、是非興味のある方は取ってみてください。個人的には北山先生デビュー作の『クロック城』がオススメです。

 

『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)

『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)