この記事は軽微なネタバレを含みます。先入観や内容に関する情報なしに読みたい方はブラウザバック推奨です。
北山猛邦の代表作の一つ『踊るジョーカー」の続編である作品です。
ブログに感想記事を載せるのが初なので(そもそもこのブログの一発目)、残念ながら『踊るジョーカー』のページはこのブログにはないです。その代わりに参考として僕の読書メーターの感想を張り付けておきます。
完全犯罪のために必要不可欠な密室が、あともう少しで完成するというその瞬間、部屋の中に黒猫が入り込んでしまった!犯行計画を崩壊させかねない黒猫を密室から取り出そうと悪戦苦闘する犯人の前に、たまたま世界一気弱な名探偵が現れて…表題作をはじめ、蝋燭だらけの密室殺人を描いた「クローズド・キャンドル」など五編を収録。キュートでコミカル、しかし心は本格ミステリ。名探偵音野順、第二の事件簿。
あらすじにある通り、今作はまさしく「キュートでコミカル」な短編連作ミステリです。
いわゆるキャラミステリだと認識してもらっても問題ないと思います。
このシリーズの魅力はなんといってもびくびくとした名探偵音野と、その音野を(無理矢理)引っ張ってくる助手の推理小説家白瀬の掛け合い、これがめっちゃいいです。特に音野がかわいいので僕としてはそこを推していきたい部分でもあります。
そのうえで今作は北山猛邦作品らしくハウダニット主体の推理小説が展開されていきます。
一番面白いと思ったのは表題作『密室から黒猫を取り出す方法』です。
今作はいわゆる倒叙ミステリとプラスアルファの謎解きなのですが、プラスアルファの部分である密室の謎解きに意外性がありました。短編サイズなので、衝撃のトリックとまでは言えないですが、倒叙の舞台と上手く絡み合っているように思います。
逆に「物理の北山」らしいという観点でいえば、この作品の5作目にあたる『クローズド・キャンドル』がいいミステリでした。
音野が中々出てこないので、そこはキャラミステリとして微妙ではあるのですが、蝋燭を立てられた奇妙な密室や、異質な館にはどこか北山ミステリらしい雰囲気があります。一見すると難解な密室ですが、謎解きは非常にわかりやすく、北山猛邦先生らしいミステリとして仕上がっています。
今作は一応名探偵音野シリーズの第2弾ではありますが、内容としては前作知識は要りません。主要登場人物以外にも『踊るジョーカー』から出てくるキャラクターはいくらかいますが、知らなくても読むときには支障がないと思います。
なので、東京創元社さん、是非この作品を創元推理で文庫化しましょう!
これが出たのは2009年なんですよ! 書店にもほぼこの作品置いてないですし、そろそろ……そろそろ、ね?
オルゴーリェンヌ(北山猛邦/2014年刊/ミステリ・フロンティア)と一緒の文庫化でもいいので……ぜひ……。
……まあ、これが言いたかったことの一つです、はい。
あと、今作が『名探偵音野順の事件簿』としてバーズでコミカライズされています。小説はキツいという方にはこちらもおすすめです。
以上。ありがとうございました。